DNAや遺伝子について学ぼう!

MENU

DNAの損傷

DNAは、生命の設計図となる重要な物質である。細胞が分裂するたびに、すべてのゲノムDNAが複製されるが、DNA複製のエラーが修復されずに残ると、それが変異となる。しかし、他にもDNAはさまざまな要因で日々傷つき、日々修復されている。そこで、DNAにはどんな損傷が起こるのか説明していきたい。

内因性のDNA損傷

DNAは非常に安定な物質なのだが、それでも日々傷つき、それが修復されないと変異になるかもしれない。塩基の脱アミノ化(酸化的脱アミノ化)は、自発的な突然変異の主な原因である。DNA中のアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)がアミノ機を失うと、それぞれヒポキサンチン、キサンチンおよびウラシル(U)になる。このシトシンの脱アミノ化反応は、哺乳類の二倍体細胞で1日に約100箇所で起こっているらしい。また、真核生物ゲノムのCG配列中シトシンは、よくメチル化されて5-メチルシトシン(5mC)になるが、この5mCがアミノ基を失うとチミン(T)になる。これらの脱アミノ化は一本鎖DNAで起こりやすく、活発な複製・転写中に生じた一本鎖DNAでは脱アミノ化しやすいようである。また、シトシンの脱アミノ化で生じたウラシルは急速にDNAから除去されるが、チミンはすでにゲノム中に普通に存在しているため5-メチルシトシン(5-mC)の脱アミノ化から生じたチミンの修復効率はいくらか悪いらしい。

塩基と糖(デオキシリボース)をつなぐN-グリコシル結合が自発的に加水分解するか、DNAグリコシラーゼによって切断されると、脱塩基(AP)部位ができる。ヒトの細胞では、1日に約18,000箇所の脱塩基部位が作られるらしい。

活性酸素は、細胞の呼吸(電子伝達系)によって必然的に生じる副産物である。また好中球などの食細胞は、生体防御のために活性酸素を産生している。低レベルであれば細胞の機能にとって重要な活性酸素であるが、反応性が非常に高いためさまざまな生体分子を酸化し、DNAにとっては損傷の原因となる。スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル(•OH)、過酸化水素(H2O2)などが活性酸素に含まれるが、なかでもヒドロキシルラジカルが最も反応性が高い。

ヒドロキシルラジカルは、炭素(C)原子間の二重結合と反応して結合したり、炭素(C)に共有結合した水素(H)を引き抜く性質もある。したがって、チミンの5位と6位の炭素間の二重結合に対するヒドロキシルラジカルの攻撃からチミジングリコールが生成される。また、グアニンの8位の炭素のヒドロキシル化からは、8-ヒドロキシグアニン8-オキソグアニンが生成される。8-オキソグアニンは、シトシンではなくアデニンと誤った塩基対を形成してしまうため、突然変異の原因となりうる。また、活性酸素は塩基を攻撃する以外に、糖-リン酸骨格を攻撃してDNAの一本鎖の切断を引き起こすこともある。

塩基のメチル化も、損傷になる。哺乳類の細胞では、1日に最大4000個のN7-メチルグアニン、600個のN3-メチルアデニン、10〜30個のO6-メチルグアニンが自発的に生じるらしい。他にも、タバコの煙・食事・汚染などの環境因子でもメチル化は誘発される。O6-メチルグアニンは変異原性が高く、N3-メチルアデニンはDNA合成の阻害による細胞毒性があるらしい。マイナーなメチル化損傷としては、変異原性のN3-メチルチミンとN3-メチルシトシンもある。

外因性のDNA損傷

太陽からの紫外線は、ヒトの皮膚がんの主な原因となる。紫外線は、その波長によってUV-A(320〜400 nm)・UV-B(290〜320 nm)・UV-C(190〜290 nm)の3つに分類されるDNAの紫外線を吸収のピークは波長260 nmであるが、この危険なUV-Cはオゾン層によってほとんど除去されるから大丈夫である。UV-Cは、2つの隣接するピリミジン間に共有結合を形成し、シクロブタンピリミジンダイマー(CPD)(6–4)光産物を生じる。それらの形成頻度は、紫外線の波長と量に依存する。

放射線にはα線・β線・γ線・中性子線・X線などがあり、原発や医療機器だけでなく、岩石や土壌からの放射線、宇宙からの宇宙線など、自然界にも存在する。放射線もDNAに対して有害な影響がある。ひとつは、DNA鎖の切断である。放射線によりDNAの一本鎖切断(SSB:single-strand break)が引き起こされるが、DNA二重らせんの両方の鎖の近接した部位で切断が起これば二本鎖切断(DSB:double-strand break)となる。もう一つは、DNAの周囲にある水や酸素分子と反応して活性酸素を生じ、これが上記のような作用でDNAに損傷を与える。

外因性の化学物質による損傷

食事やタバコの煙・バイオマス燃焼・化学療法剤などから生成されるアルキル化剤も、DNA損傷の原因となる。アルキル化剤とは、アルキル基(-CH3や-CH2-CH3など)を共有結合させる薬剤であり、塩基中の窒素(N)や酸素(O)(とくにグアニンのN7とアデニンのN3)に対する親和性が高いようである。研究でよく使われる突然変異誘発剤のメタンスルホン酸メチル(MMS)やメタンスルホン酸エチル(EMS)も、アルキル化剤である。これによりグアニンの6位の酸素がアルキル化されると、本来はシトシンと形成するはずの塩基対がチミンと形成するようになり、変異原性を示す

他にも、タンパク質がDNAにクロスリンク(共有結合)してしまうことによるDNA-タンパク質クロスリンク損傷もある。例えば、DNAの超らせん(スーパーコイル)を解消するトポイソメラーゼIという酵素は、DNAの一方の鎖を切断し、切断されなかった方の鎖を軸に回転させることでねじれを解消した後、DNA鎖を再結合させる。この反応中間体として、トポイソメラーゼIは切断されたDNA鎖とチロシンを介して共有結合する。もしこの再結合がうまくいかないとこの中間体がDNA-タンパク質クロスリンク損傷として残ることになる。また、カンプトテシンなどの抗がん剤は、この中間体を安定化してしまうことも知られている。

その他、芳香族アミンや多環芳香族炭化水素など、DNAに損傷を引き起こす外的要因は多数あるので、もっと詳しく知りたい人は専門の文献を調べて欲しい。

PAGETOP
Copyright © NS遺伝子研究室 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.