DNAや遺伝子について学ぼう!

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塩基対と水素結合

DNAの塩基は、アデニン(A)とチミン(T)が特異的に結合し、グアニン(G)とシトシン(C)が特異的に結合している。この特異的な結合の基盤となっているのが、水素結合である。

ちょっと高校化学の復習を!

原子は、原子核とその周りを回る電子で構成されている。また、原子核にはプラスの電荷をもつ陽子があり、周りにあるマイナスの電荷をもつ電子は陽子と同じ数だけあって、原子全体としては電荷が打ち消されて中性になっている。さてこの電子だが、原子核の周りの電子殻という軌道上にある。電子殻は、原子核に近い内側からK殻・L殻・M殻…と名付けられており、K殻には電子2個まで、L殻には電子8個まで入ることが出来る。さらに、L殻は4つの小軌道(2s軌道と3つの2p軌道)で構成されていて、それぞれの小軌道に2個の電子が入る。

水素(H)は陽子数1個であり、したがって電子数も1個である。この場合、K殻に電子が1個だけ入った状態になる。炭素(C)は陽子数6個・電子数6個であり、K殻は電子2個で満たされ、さらに外側のL殻に残りの4個の電子(各小軌道に1個ずつ)が入っている。窒素(N)は陽子数7個であり、K殻に2個の電子とL殻に5個の電子(2s軌道に2つと2p軌道に各1個)が入っている。酸素(O)は陽子数8個であり、K殻に2個の電子とL殻に6個の電子(2s軌道に2つと1つの2p軌道に1個、2つの2p軌道に各1個)が入っている。

原子は、最も外側の電子殻が最大収容数いっぱいまで電子で満たされたような電子配置のときが安定である。そこで、電子を別の原子を共有することにより、電子殻を電子で満たしている。これがいわゆる共有結合である。例えば、水素分子(H2)は、2つの水素原子が互いの電子を共有してK殻に電子2個を配置している。また水分子(H2O)は、酸素原子中で各1個の電子をもつ2つの2p軌道が、それぞれ水素原子と電子を共有しているのである。DNAを構成する原子のほとんども、この共有結合によってつながっている。

各小軌道の2つの電子(電子対という)のうち、原子間で共有することにより出来たペアを共有電子対、はじめからペアになっていたものを非共有電子対という。また、共有結合に使われた、ペアになっていない電子を不対電子という。これらの用語はこれからも出てくるので、是非覚えておいてもらいたい。

水素結合について

これも高校化学の復習だが、電気陰性度とは原子が電子を引き寄せる強さを表す尺度である。酸素(O)や窒素(N)など、周期表の右上にある原子ほど電気陰性度が大きいとされる。ではここで、水分子(H2O)をみてみよう。水分子では、1つの酸素原子と2つの水素原子が共有結合により結ばれている。つまり、酸素と水素の間で電子を共有している2組の共有電子対があることになる。ところが、この2組の共有電子対は電気陰性度の大きい酸素原子側に強く引き寄せられ、結果として酸素がややマイナスの電荷をもち、水素がややプラスの電荷をもつことになる。このように、電荷のかたよりの生じることを極性という。

水分子のこのような極性により、水分子どうしの間に電気的な引力がはたらくことになる。つまり、水分子中でマイナスの電荷をもった酸素(O)が、別の水分子中でプラスの電荷をもった水素(H)と電気的に引き合うのである。これが水素結合である。このような性質のため、水分子は沸点が高く、しかも他の極性分子をよく溶ける溶媒となっているのである。

さて、ここでDNAの塩基対をみてみよう。アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)が特異的に結合している。これは、塩基中の-NHとNまたはNHとOの間の結合であることが下の図から分かると思う。ここが、水素結合である。すなわち、窒素(N)は電気陰性度が大きいため、NH中のN側に共有電子対が引き寄せられ、窒素(N)がややマイナスの電荷を、水素(H)がややプラスの電荷をもつ。そこに別の電気陰性度の大きいマイナスの電荷をもった酸素(O)や窒素(N)が近づくと、プラスの電荷をもった水素(H)との間で電気的な結合が生まれるのである。

A•T塩基対の場合、アデニン(A)がもつ-NH2とチミン(T)がもつ=Oの部分、チミン(T)がもつNHとアデニン(A)がもつNの部分の2カ所で水素結合が形成される。G•C塩基対の場合、グアニン(G)がもつ=Oとシトシン(C)がもつ-NH2の部分、グアニン(G)がもつNHとシトシン(C)がもつNの部分、グアニン(G)がもつ-NH2とシトシン(C)がもつ=Oの部分の3カ所で水素結合が形成される。つまり、G•C塩基対の方が水素結合が多い分、A•T塩基対よりも塩基間の結合が強いのである。そのため、G•C塩基対の多いDNAほど、熱によりDNAの二重らせんが解けにくくなっている。

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