DNAや遺伝子について学ぼう!

道具としての大腸菌

このページのテーマは、これ!
大腸菌とプラスミドについて

博士、今日は大腸菌の話なんですか?

そうじゃよ。
う〜ん、なんか汚そうな話ですね?
いや、汚い話じゃない。確かに、大腸菌は人間を含めた哺乳類の腸などに寄生する細菌で、清潔さ(糞尿による汚染度)の指標として使われておる。しかし、遺伝子の研究においては、これほど役に立つ道具もないくらいじゃ。

生き物なのに、道具として使っているんですね。なぜ、大腸菌がいいんですか?

うむ、よい質問じゃ。第1に、大腸菌は増殖が速く、短時間にたくさんの菌体が得られるんじゃ。そして第2に、プラスミドと呼ばれる環状のDNAを持つことが出来るんじゃよ。
プラスミド?
大腸菌は、染色体DNAとは別にプラスミドと呼ばれる小さな環状のDNAを持つことが出来るんじゃ。 このプラスミドと大腸菌を使えば、目的のDNAを自由自在に増やすことが出来るんじゃよ。
ふ〜ん。でも、どうやって増やすんですか?

それは、これからじっくり説明していこう。

まずは、遺伝子の研究に使われるプラスミドの構造を簡単に説明しよう。プラスミドには、まず複製起点がある。この複製起点からプラスミドDNAの複製が起こり、プラスミドの数が増えるんじゃ。そしてその他に、抗生物質を修飾・分解するようなタンパク質をコードしている遺伝子(抗生物質耐性遺伝子)が含まれる。
こうせい物質?どんな不良大腸菌も、私みたいな良い子になってしまうんですか?
全然違う!抗生物質とは、細菌などの微生物の発育やその他の機能を阻害する物質のことなんじゃ。例えば、ほれ、風邪をひいて病院に行くと、風邪薬と一緒に処方されていることがあるじゃろう?
わかりました!バイ菌を殺したり、弱らせたりしてくれる薬のことですね。でも、その抗生物資を修飾・分解するって、どういうことですか?

では、よく使われるクロラムフェニコールと呼ばれる抗生物質を例に説明しよう。クロラムフェニコールは、リボソームの50Sサブユニットに結合してタンパク質の合成(翻訳)を阻害するんじゃ。だから、クロラムフェニコール存在下では大腸菌は増殖できない。
注:大腸菌などのバクテリアでは、60Sサブユニットの代わりに50Sサブユニットが使われている。また、40Sサブユニットの代わりには、30Sサブユニットが使われている。

ふむふむ
ところが、クロラムフェニコールル耐性遺伝子を持つプラスミドを大腸菌に導入すると、このプラスミドからクロラムフェニコールを修飾するタンパク質が作られて、修飾されたクロラムフェニコールはリボソームに結合できなくなるんじゃ。

すると、タンパク質の合成を阻害することができなくなって、薬が効かなくなりますね。

その通り。つまり、プラスミドを持たない大腸菌は抗生物質があると増殖できないが、プラスミドを持つことにより抗生物質を修飾・分解できるようになり、抗生物質があっても増殖できるようになるんじゃ。したがって、プラスミドと適正な抗生物質を使えば、プラスミドを持つ大腸菌と持たない大腸菌とを区別することが出来るんじゃよ。
なるほど。抗生物質を使って、プラスミドを持つ大腸菌だけを選べるんですね。

その通り。そして、このように遺伝子を導入することにより生物の性質を変えることを、形質転換と呼ぶんじゃ。さらに、前のページで紹介した組換えDNAをこのプラスミドを使って作れば、とても役に立つんじゃ。例えば、このプラスミドの一部に、人間の遺伝子を組み込んでやる。それを大腸菌に導入すれば、大腸菌が人間の遺伝子をプラスミドと共にどんどん増やしてくれるんじゃ。

へ〜え。違う生物の遺伝子を増やしてくれるなんて、大腸菌って使える奴だったんですね。
だが、大腸菌の凄いところは、これだけではない。人間の遺伝子を組み込んだプラスミドを大腸菌に導入し、それを発現させることも出来るんじゃ。つまり、プラスミド中の人間の遺伝子の上流に、転写に必要なプロモーターを付けておけば、大腸菌の中でこの遺伝子の転写が起こり、mRNAが合成されるんじゃ。しかも、そのmRNAは大腸菌のリボソームで翻訳されて、タンパク質が作られる。
えっ!大腸菌が人間のタンパク質を作ってしまうんですか?なんか、汚そうなタンパク質ですね。
だから、汚くないんだってば!とにかく、大腸菌に人間の遺伝子がコードするタンパク質を大量に作らせることが出来る。しかも、そのタンパク質を簡単に精製できるんじゃ。
きれいになるんですね。よかった!大腸菌を、生きたタンパク質合成装置として使えるんですね。
現在では、この方法でさまざまなタンパク質(酵素)が大量に精製されておる。そして、医療にも使われておるんじゃ。
素晴らしいですね。例えば?

うむ、例えば糖尿病の治療に使われるインシュリンなどは、この方法で大量に作られておるんじゃ。昔は、ブタなどの生き物から精製しておったらしいぞ。

ふ〜ん、大腸さまさまですね。
ついでにもう一つ、面白い話を紹介しよう。実は、わしの好きな納豆も、プラスミドのおかげで出来るらしいんじゃ。納豆を作るのに使われる納豆菌は、分類学的には枯草菌と呼ばれておる。そしてこの枯草菌は、大腸菌に次いで最もよく実験に使われる細菌なんじゃ。しかも、大腸菌と同様、プラスミドを持つことが出来る。
で、プラスミドと納豆の関係は?
実は、納豆をネバネバさせるのに、プラスミドが必要なんじゃよ。プラスミドを持たない枯草菌に納豆を作らせてもネバネバしないが、プラスミドを持たせるとネバネバするらしい。つまり、プラスミドから作られるタンパク質があのネバネバに必要なんじゃ。しかし、プラスミドが無くても枯草菌は生きていける。不思議じゃのぉ...
なるほど。バイ菌の話はこれで終わりですか?
バイ菌て言うなぁ〜
博士、汚い話はもうやめましょうね。
...
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