DNA構造の基本は、ポリヌクレオチド鎖である。このポリヌクレオチド鎖が2本集って、いわゆる『二重らせん構造』が形成される。ここでは、この二重らせん構造の詳細を解説しよう。
2本のポリヌクレオチドの塩基は、水素結合で結ばれる
DNAの二重らせん構造は、ポリヌクレオチド鎖が2本より合わさって形成される。このとき重要なのは、ポリヌクレオチド鎖から突き出した塩基が、らせんの内側で特異的な塩基対を形成していることである。下の図のように、アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)が、水素結合により特異的な塩基対を形成している。そのため、2本のポリヌクレオチド鎖の塩基配列は相補的になっているのである。
逆平行な2本のポリヌクレオチドから成る
また内側の塩基対は、らせん軸と直交する形で積み重なっている。この隣り合う塩基対間で疎水性相互作用がはたらき、これによりDNAの二本鎖構造はさらに安定化するのである。
もうひとつ重要なことは、DNAを構成する2本のポリヌクレオチド鎖は逆平行であるということである。ポリヌクレオチド鎖には5’末端と3’末端という方向性があるが、一方の鎖の5’末端側には他方の鎖の3’末端側が並び、3’末端側には他方の鎖の5’末端側が並ぶ。
・右巻きの二重らせんで、1回転あたり10個の塩基対がある
上記のように相補的に結合した2本のポリヌクレオチド鎖は、らせん構造を形成する。その特徴は、右巻きの二重らせんであるということ。つまり、らせんに沿って辿っていくと、右に曲がりながら進んでいくのである。
DNAの二重らせん構造の詳細をみていくと、らせん一回転あたりの塩基対数は10であり、塩基対間の距離は3.4Åである。したがって、らせん一回転あたりの長さは34Åということになる。ただし、生理的イオン強度の水溶液中では、らせん一回転あたりの塩基対数は10.5となる。また、塩基対間の距離は塩基配列依存的に変化しており(3.14〜3.56Å)、3.4Åというのは全体の平均ということになる。らせんの直径は20Åである。
二重らせんには2種類の溝がある
最後に、DNAの二重らせん構造には主溝(Major Groove)と副溝(Minor Groove)という2種類の溝がある。上の図で、幅の広い溝が主溝、狭い溝が副溝である。このような溝は、塩基対が糖-リン酸骨格に接続する角度と関係がある。相補的に結合した2つの塩基は、180°開いた位置で糖-リン酸骨格に接続するのではなく、一方に偏った位置関係で接続している。したがって、2つの接続位置から見ると、広い空間と狭い空間が出来てしまう。この広い空間が主溝を形成し、狭い空間が副溝を形成するのである。ちなみに、塩基対は主溝側にややせり出した形になっているが、これが重要な意味を持つことになる。