遺伝子って何? DNAとの違いは何?
ここではそんな素朴な疑問について解説しましょう。
遺伝子とは?
遺伝子について一般的に知られていることは、遺伝形質を担うということである。つまり、遺伝するような生物の特徴や性質を決めているのが、遺伝子である。もう少し詳しく知っている人は、タンパク質をつくるための情報であると認識しているでしょう。ここでは、少し具体的に遺伝子について紹介しよう。
DNAには4種類の塩基が含まれており、これがDNA分子に沿って並んでいる。この並び方がタンパク質をつくるための暗号となっているのである。その過程は、まず転写によりDNAの塩基配列情報がRNAへと写し取られる。そして翻訳により、RNAの塩基配列情報がタンパク質のアミノ酸配列の情報へと変換され、タンパク質がつくられる。
このタンパク質をつくる情報を担う部分が遺伝子なのである。ここで大事なのは、DNAと遺伝子の関係である。前ページでも紹介したように、DNAとはデオキシリボ核酸という二重らせん構造をした糸状の化学物質のことである。そして遺伝子は、DNAという化学物質上において、タンパク質をつくる情報を担う領域のことを指す。DNA上には多数の遺伝子が存在するので、1つのDNA分子上には複数のタンパク質を指令する領域が存在するということになる。
タンパク質のアミノ酸配列を指令している部分は、構造遺伝子とよばれる。真核生物の多くの構造遺伝子では、アミノ酸配列を指令している部分が指令していない配列(イントロン)によって分断されているが、このイントロンはRNAへと転写された後に除去される。また、最終産物が翻訳されずにRNAとして機能するものもあるので、構造遺伝子とはタンパク質のアミノ酸配列やRNAの塩基配列を指令するDNA上の領域を考えたらよいだろう。一般的に遺伝子というと、この構造遺伝子のことを指すことが多い。
しかし、構造遺伝子の近傍には、タンパク質をいつ・どこで・どのくらいの量つくるかを制御する調節領域が存在している。プロモーターやエンハンサーである。この調節領域も含めて遺伝子と考える場合もある。つまり、『遺伝子とは、いつ・どこで・どのくらいの量・どのような構造(機能)のタンパク質をつくるかを規定するDNA上の領域である』ということになる。
遺伝子というタンパク質を作るための情報は、転写・翻訳を経て、タンパク質へと変換される。あるタンパク質は、体や細胞を支える構造として機能し、あるタンパク質は酵素としてはたらき、代謝の一部を担うかもしれない。このように、DNAがもつ遺伝情報は、タンパク質となって初めてその機能を果たすことができる。すなわち、遺伝子が発現するということは、DNAがもつ遺伝情報が何らかの活動へと変換されることなのである。