このページのテーマは、これ!
遺伝子は、どのように伝えられるのか?
遺伝子は、どのように伝えられるのか?
博士、今日は何のお話をするんですか?
今日から遺伝の話をしていこうと思う。本来は、遺伝子(DNA)について説明する前に話すべきことかもしれないが、ここでは遺伝子について知ったうえで説明することにしよう。その方が分かりやすいと思うんじゃが...
私、遺伝は苦手なんです。ここで生物学を挫折したという人もきっと多いですよね?
はーい
最初の2ページ、“遺伝子とは”と“遺伝子への旅”の内容を思い出して欲しい。遺伝とは、細胞から細胞へあるいは親から子へと形質(特徴)が伝えられる現象のことで、この形質を決定しているのが遺伝子じゃ。遺伝子はDNAという物質でつくられており、長いDNA上にたくさんの遺伝子が並んでおる。そして、たくさんの遺伝子を持ったDNAがコンパクトに凝縮されて、染色体という形で細胞の核内に保存されておる。覚えているかな?
はーい、もちろんです。
つまり、細胞が分裂するとき、遺伝子は染色体に乗って細胞から細胞へと伝えられるんじゃ。また、遺伝子が親から子へ伝えられるときも、細胞分裂が大きく関与しておる。そこで今回は、この細胞分裂について勉強しよう。
う〜ん、難しそう...
われわれ人間を含めた多くの生物は、同じ種類の染色体を2組もっておる。片方は父親由来で、もう片方は母親由来じゃ。この対になっている染色体のことを、相同染色体と呼ぶ。人間の場合、1つの細胞の中に46本の染色体を持っており、23本は父親由来、23本は母親由来なんじゃ。つまり、23組の相同染色体を持っているというわけじゃ。分かるかな?
大丈夫です。
例えば、1つの細胞に6本の染色体を持つ生物を想像してごらん。この生物の細胞は、下の図のような青・赤・黒の3組の相同染色体を持っておることになるんじゃ。
細胞分裂には、2種類ある。1つが体細胞分裂で、もう1つが減数分裂と呼ばれるものじゃ。体細胞分裂とは、いわゆる細胞分裂のことで、分裂後の2つの細胞は分裂前の細胞と全く同じ染色体(遺伝子)を持つことになる。それに対して、減数分裂とはちょっと特殊な細胞分裂なんじゃ。
減数分裂という名前が付いているということは、分裂すると細胞の数が減るんですか?
違う!減るのは染色体の数じゃ。とりあえず減数分裂の説明は後にして、まずは体細胞分裂について説明しよう。
でも、減数...
“遺伝子分身の術”のページで話したように、染色体(遺伝子)は細胞分裂の前に複製されて2倍になる。2倍になった染色体が2つの細胞に別れて入るから、分裂後の細胞は分裂前の細胞と同じ数の染色体を持つことになるんじゃ。染色体が同じということは、遺伝子も同じということじゃ。下の図を見てごらん。
なるほど。だから分裂前の細胞の性質が、分裂後の細胞に正しく伝えられるんですね。
そうじゃ。そして、それをアニメーションにすると、下のようになる。
しかし、減数分裂の場合は少し状況が違う。実は、減数分裂とは精子や卵を作るための細胞分裂のことなんじゃ。もし6本の染色体を持つ生物が体細胞分裂により精子や卵を作ったら、精子も卵も6本の染色体を持つことになり、受精後の子供の染色体は12本になってしまう。
新種誕生ですね?
それでは困る。そこで、減数分裂の出番じゃ。簡単に説明すると、減数分裂では2回分裂が起こるのに、染色体(遺伝子)の複製は1回しか起こらないんじゃ。その結果、分裂後の細胞の染色体の数は半分に減ることになる。上記の6本の染色体を持つ生物の場合、減数分裂により3本の染色体を持つ精子や卵が出来る。この精子と卵とが受精すれば、子供は親と同じ6本の染色体を持つことになるんじゃ。
なるほど。では、具体的に教えてください。
よろしい。減数分裂でも、まず最初は染色体(遺伝子)が複製され、2倍になるんじゃ。そして、1回目の分裂(第1減数分裂)前に相同染色体どうしが対合し、二価染色体が形成される。
次に分裂開始じゃ。まず第1減数分裂で、二価染色体中の相同染色体が、別々の細胞に別れて入る。このとき、それぞれの相同染色体で、どちらがどちらの細胞に入るかはランダムに選ばれる。つまり、青い相同染色体で1番か2番がランダムに選ばれ、赤い相同染色体でも同様に1番か2番がランダムに選ばれるということじゃ。これが遺伝現象を説明する基礎となるので、よく覚えておいて欲しい。そして最後に、それぞれの細胞が複製なしで2回目の分裂(第2減数分裂)に入るんじゃ。
したがって減数分裂では、1つの細胞から半数の染色体を持つ4個の細胞が出来るんじゃ。分かりにくいもしれないが、下のアニメーションを見てごらん。
なるほど、納得です。ところで、遺伝の話は?
うむ。次のページから、本格的に遺伝の話をしよう!