遺伝子の鎖は、なぜ2本必要なのか?
遺伝子(DNA)は、どのようにして増えるのか?
ふ〜ん・・・・・・
キャー
ど、どうした?
いや、違うんじゃ。どんなに細胞が分裂しても、各々の細胞が持つ遺伝子の量は変わらないんじゃ。
よ、よろしい。今回は、遺伝子の複製について説明してあげよう。
前にも話したように、遺伝子は分裂後の細胞がどんなタンパク質を作るべきなのか伝えるために、細胞から細胞へと伝えられなくてはならない。したがって、細胞分裂前の細胞と細胞分裂後の細胞は、同じ遺伝子を持っていなくてはならないのじゃ。しかし、細胞分裂の時にそのまま遺伝子を分けると、分裂後の細胞が持つ遺伝子は半分に減ってしまう。そこで各々の細胞は、分裂の前に細胞が持つすべてのDNAをコピーして、倍にしておくんじゃ。そうすれば、分裂後もDNAの量は変わらないし、細胞の親子は同じ遺伝子を持つことが出来るじゃろ?
これが、実によく出来た仕組みなんじゃ。
DNAが自分のコピーを作ることを、DNAの複製というのじゃが、この複製にはDNAの二重らせん構造が非常に重要な役割を果たしておる。
簡単にいうと、複製の時にDNAの2本の鎖が離れて、各々の鎖が鋳型となって新しい鎖を作るんじゃ。しかも、塩基対の組み合わせは常にAとT、GとCと決まっているから、複製後の2本のDNAは同じ塩基の配列を持つことになるんじゃ。下の図を見れば分かるかな?そして、複製後のDNAの一方の鎖は必ず分裂前の細胞が持っていた鎖で、もう一方の鎖は新たに作られた鎖ということになる。したがって、このような複製の仕方を、半保存的複製と呼ぶんじゃ。
ま、待ちたまえ!まだ終わっとらんよ。これから、DNAの複製がどのように進むか説明しよう。
DNAの複製は、複製起点と呼ばれる特別な点から始まるんじゃ。まず、複製起点の二重らせん構造がほどけて、そこから両方向に複製が始まる。複製を行っているY字型の部分を複製フォークと呼ぶのじゃが、このような複製では、2つの複製フォークが複製起点から両方向に遠ざかっていくことになる。
この複製フォークで、新しいDNAの鎖を合成しているのが、DNAポリメラーゼという酵素じゃ。このDNAポリメラーゼは、下の図のように鋳型のDNAと塩基対を形成できるヌクレオチドを5’から3’の方向に徐々につなげていく酵素なんじゃ。
あきらめては、いかん!ネバーギブアップじゃ!実は、一方の鎖では不連続的に合成するんじゃ。下の絵の青い矢印を見てごらん。5’から3’の方向へ短いDNAが合成され、この短い合成が複製フォークの進行方向に不連続的に行われるということじゃ。そして最終的に、これらの短い断片がつなげられて、一本の鎖となる。
このような不連続的な合成の方法を発見したのは、岡崎令治という人じゃ。だから、この不連続合成の時にできる短い断片を岡崎フラグメントと呼ぶ。結局、DNAの複製をまとめると、下のアニメーションのようになっておるんじゃ。もう一度、説明をよく思い出しながら、見てごらん。
最後に、もう一つ付け加えておこう。複製の時にDNAの合成を始めるためには、プライマーと呼ばれる短い断片が必要なんじゃ。DNA複製の時は、短いRNAがプライマーとして使われる。RNAについては、”ただしいコピーの仕方(転写)”のページで詳しく紹介しよう。