DNAや遺伝子について学ぼう!

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DNAの傷を修復

このページのテーマは、これ!
DNAについた傷は、どうやって治すの?
うぉ〜!
ど、どうしたんですか?ツチノコでも出ましたか?
指をケガしてしまったんじゃぁ!

なんと!そこからキノコが生えてきたんですね!

いやいや、そんなことは...
なぁ〜んだ、つまんないなぁ...
博士なんだから、そんなケガはササッと修復してくださいよ。
指のケガの修復はすぐにはできないが、DNAの修復の話ならササッとしてあげよう。
えっ、DNAもケガをするんですか?
そうなんじゃ、DNAもわしの心のように日々傷ついておるんじゃ。
いったい誰が傷つけるんでしょうね。
DNAは化学物質や放射線などにさらされて、常にダメージを受けておる。また、DNAを複製するときに、DNAポリメラーゼがミスを起こすこともあるんじゃ。一般に、DNAポリメラーゼは約10万塩基の合成に1回の割合でミスを犯す。しかし、DNAポリメラーゼには間違いを正す(校正する)機能があって、これによって誤りの頻度は1000万塩基に1回となる。
誤りは正す...反省してるんですね。
しかし、これではまだまだミスが多く残るので、細胞にはこれを修復する働きがあるんじゃ。
なるほど。でも、どうやって誤った部分を見つけるんですか?
DNAポリメラーゼが誤ってDNAを合成しただけだと、DNA自体に損傷はないが、その部分に塩基対のミスマッチが生じるんじゃ。例えば、鋳型DNAにGがあったらそこにはCを入れなくてはならないのだが、誤ってAを入れてしまうと、そこにはG-Aのミスマッチ塩基対ができてしまう。
でもこの場合、GとAのどちらが誤りなのか、わかるんですか?
よい質問じゃ。
大腸菌では、ゲノムDNAの両方の鎖がメチル化されているのに対しDNAの複製で合成された新しい鎖はメチル化されていない。したがって、メチル化されていない方の鎖が新生鎖で、この新生鎖中の塩基が誤りだと判定できるんじゃ。しかしヒトでは、DNAのメチル化を利用しない方法で区別するらしい。
原核生物と真核生物で違うんですね。
あとは、新生鎖に切れ目を入れて、ミスマッチ塩基を含む領域を取り除くんじゃ。そして、生じた一本鎖のDNA領域を鋳型としてDNAポリメラーゼが合成し、最後にDNAリガーゼがギャップを埋めるんじゃよ。このような修復のしくみを、ミスマッチ修復という。こうして修復することで、誤りの頻度はおよそ10億塩基に一回まで減少するんじゃ。

修復完了ですね!
では、DNA自体に傷があったらどうじゃろう。
DNA絆創膏があるんじゃないですか?

塩基に生じた比較的小さな損傷は、塩基除去修復というしくみにより修復される。まず、DNAグリコシラーゼという酵素が損傷した塩基を切り取るんじゃ。そして、生じた脱塩基部位をAPエンドヌクレアーゼという酵素が認識して、その部分のDNAの鎖を除去する。続いて、修復用のDNAポリメラーゼが一塩基分のDNAを改めて合成し、最後にDNAリガーゼがギャップを埋めるんじゃよ。

なるほど、いろいろな酵素が連携して修復するんですね。
では次に、紫外線によりDNAが傷つくと、ピリミジンダイマーという比較的大きな損傷ができてしまう。この場合はどうじゃろうか。
もう緊急オペ(手術)しかありませんね。
いやいや、オペは無理じゃ。このようなピリミジンダイマーは、ヌクレオチド除去修復というしくみで修復されるんじゃ。ヌクレオチド除去修復では、損傷部位を含む25〜30ヌクレオチドくらいの領域が切り取られる。そして、生じた一本鎖のDNA領域を鋳型としてDNAポリメラーゼがDNAを合成し、最後にDNAリガーゼがギャップを埋めるんじゃ。

わりとシンプルですね。
では最後に、放射線などの影響でDNAが切れてしまったらどうしようか?
いよいよDNAアロ*アルファの登場ですね。
ちがう!
放射線の照射などにより二本鎖のDNAが完全に切れてしまったら、相同組換えまたは非相同末端結合というしくみにより修復されるんじゃ。
ほほぉ〜
相同組換えではまず、切断末端が加工されて長い一本鎖DNAができるんじゃ。そしてこの一本鎖DNAの3’末端が、DNA複製後の娘DNA分子(姉妹染色分体)や相同染色体にある相同な配列に侵入して鎖交換反応を行い、その相同な配列を鋳型にしてDNA合成を行うんじゃ。

この鎖交換反応では、組換え中間体として下の図のようなホリデイ連結が形成される。このホリデイ連結は、分岐点移動という方法で移動したのちに解離して、2つの別々なDNAにもどるんじゃ。

おぉ〜、DNA七変化に出てきたcruciformのようですね。
もうひとつの非相同末端結合では、切れたDNAの切断面をDNA切断酵素やDNAポリメラーゼが連結可能な状態に整えて、その末端どうしがDNAリガーゼにより単純に連結されるんじゃ。ただし、非相同末端結合では、修復によって挿入や欠失などのエラーが生じやすいのが特徴じゃ。

修復でエラーが生じるって、なんか危険な感じですね。
そうじゃのぉ。しかし、正確性の高い相同組換えは姉妹染色分体を必要とするため、細胞周期のごく限られた時期にしか行えないんじゃ。切れてしまったDNAを放っておくのはもっと危険なので、正確性は低くてもいつでも素早く行える非相同末端結合を使うんじゃないだろうか。それにヒトの場合、ゲノムDNAの多くはタンパク質をコードしていないから、非相同末端結合による修復ミスが影響する可能性が低いんじゃ。だから、ヒトなどでは非相同末端結合が主要な修復経路で、原核生物や酵母では相同組換えが主要な経路になるらしい。
なるほど、ありがとうございました。
じゃぁ博士、今夜はケガの修復祝いにキノコ鍋ですね!。
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