このページのテーマは、これ!
ものすごぉ〜く少ない微量のDNAを見る!
ものすごぉ〜く少ない微量のDNAを見る!
エリィ〜♪、マイラァ〜ブゥ〜♪、エェェェェ〜リィィィィ〜♪
おぉぉ! サザンの「いとしのエリー」ですね。今日の博士はノリノリですねぇ。でも、博士みたいな浮き世離れした老人が、サザンなんてよく知ってましたね。
科学界の桑田圭祐と呼ばれるこのわしに、浮き世離れした老人とは失礼な!わしはサザンが得意なんじゃよ。
本当ですか?じゃあ、もっと聞かせてくださいよ。
そうかい。では今日は、サザンについてわしが熱く語ろう!
え?語る?
そう。サザン分析について、熱く語るんじゃよ。
サザン分析?
サザン分析とは、極微量のDNAを検出する方法なんじゃよ。大量のDNAは臭化エチジウムで染色すれば右の図のように簡単に見えるが、極微量だと臭化エチジウムでは見れない。
いつの間にかDNAの話になっていたんですね。はいはい。
さらに、様々な種類のDNAが混在する中から目的の塩基配列を持つDNAだけを検出するのにも、サザン分析は役立つんじゃよ。
え?どうして、DNAを染め分けることが出来るんですか?
うむ。サザン分析では、標識したDNAを使って、この標識DNAと塩基対を形成することができるDNAだけを検出するんじゃよ。つまり、色々な塩基配列のDNAが混ざり合っている中から、標識DNAと塩基対を形成できる配列だけを見つけることができるんじゃ。代表的な例では、ゲノムDNAのサザン分析がある。
ゲノムDNAって何ですか?
ゲノムDNAとは、ある生物の細胞が持っている全DNAのセットのことじゃよ。このゲノムDNAの中から特定の遺伝子を検出するのにサザン分析が使われるんじゃ。では、ゲノム中にAという遺伝子があるかどうか調べることにしよう。
難しそうですね。
まず、ゲノムDNAを抽出・精製しなくてはならん。ゲノムDNAというのは染色体を形成する長〜いDNAだから、まず制限酵素で短く切ってやるんじゃ。制限酵素については覚えておるかな?
もちろん覚えてますよ。DNAを塩基配列特異的に切断する酵素ですよね。
そうじゃ。ゲノムDNAを制限酵素で切断すると、色々な長さのDNA断片になる。もしA遺伝子がゲノム中に一個だけあるなら、A遺伝子はこれらのDNA断片のひとつに含まれておるはずじゃ。
※ 上の博士の発言は、精子や卵などの生殖細胞についてあてはまることです。
通常の体細胞では、ゲノムDNAには父親由来と母親由来の2つの遺伝子が存在します。
なるほど。そのA遺伝子が含まれるたった一種類のDNA断片を、サザン分析でなら検出できるんですね。
う〜ん、何もバンドは出てませんね。
色々なサイズのDNA断片が混在しているから、滝のように広がってしまうんじゃよ。次に、このDNAを特殊な膜(フィルター)に移すんじゃが、さてどうやって移すか分かるかな?
そんなことは、コピー機でコピーすれば一発じゃないですか!
なんで、こんな風に紙を積み上げるだけでDNAをフィルターに移すことが出来るんですか?
この乾いた紙が、ゲルの下の溶液を吸い上げていくときに、ゲルの中のDNAも一緒に吸い上げられていくんじゃ。ところが、この溶液はフィルターを通過してしまうが、DNAはフィルターを通過できず、フィルター上に残るんじゃよ。
なるほど。こうやって、ゲルの中のDNAがフィルター上に移されるんですね。
そう。そして遺伝子の部屋恒例のアニメーションにすると、下のようになる。この過程をブロッティングと呼ぶんじゃ。
ふ〜ん。でも、このままではまだ滝のように広がったままですよね。
そこで次に、この滝のように見える多数のDNAの中から目的のDNAだけを見つけ出すんじゃ。
どうやって?
それは、最初の部分で紹介した標識DNA(プローブ)を使うんじゃ。まぁ、DNAのあぶり出しみたいなものかのぉ。
標識DNAの標識って、具体的にはどんなものなのですか?
よく使われるのは、放射性物質じゃな。DNAにはリンが含まれるが、このリンの部分に放射線を発するリンを使うんじゃよ。しかし最近では、放射性物質ではなくジゴキシゲニンなどで標識された塩基が使われたりするんじゃよ。
なるほど。とにかく、DNAに何らかの印を付けたものなんですね。
ふむふむ。では、そのプローブをどう使うんですか?
滝のようなDNAが付いたフィルターと1本鎖にしたプローブを、塩がたくさん入った溶液中に入れておくんじゃ。
なぜ塩がいるんですか?
先にも言ったように、サザン分析の原理は、目的のDNAと標識されたプローブDNAとの間で塩基対を形成させることじゃ。塩は、この塩基対の形成を容易にしてくれるんじゃよ。
なるほど。塩があると、DNAの塩基対が安定になるんですね。
そう。この塩基対を形成させる過程をハイブリダイゼーションと呼ぶんじゃ。
その通りじゃ。そして最後に余分なプローブを洗い流し、フィルター上のDNAと塩基対を形成したプローブの標識を検出すれば終了なんじゃ。プローブを放射性物質で標識したときはX線フィルム(レントゲンのフィルム)を使えばよいし、ジゴキシゲニンなどの非放射性物質で標識したときは、この標識を光らせるような処理をしてからX線フィルムを使うんじゃよ。
そう!今回は、なかなか理解がよろしい!
でも、どうしてこの方法がサザン分析をサザン分析を呼ぶんですか?サザンて、方角の南という意味ですよね?
実はこのサザンというのは、この方法を開発した人の名前なんじゃよ。サザンさんが作ったサザン分析というわけじゃ
えっ?サザン分析は桑田圭祐が発明したんじゃないんですか?なんと! サザン(南)があるなら、ノザン(北)とかもあると面白いですよね。
ふふふ...実はあるんじゃよ。サザン分析と同様にしてRNAを検出する方法はノザン分析と呼ばれておる。
じゃ、じゃあ、ウェスタン(西)はどうですか?
むふふふふ...それもあるんじゃ。電気泳動したタンパク質を検出する方法がウェスタン分析と呼ばれておる。ただしこの場合は、プローブの代わりに抗体を使うんじゃよ。
むむむ。ということは、イースタン(東)てのもあるんでしょうね?
残念ながら、イースタン分析というのはない。しかし、サウスウェスタン(南西)はあるぞ。電気泳動したタンパク質を標識DNAのプローブで検出する方法をサウスウェスタン分析と呼ぶんじゃ。この方法では、プローブに用いたDNAに結合するタンパク質を検出するんじゃよ。
ふ〜ん、色々あるんですねぇ。しかし、イースタン(東)がいないんじゃぁ、始まりませんねぇ!サウスウェスタンじゃぁ親にならないし...博士、テンピンでどうですか?
あのねぇ...研究室で麻雀を始めるんじゃない!