DNAや遺伝子について学ぼう!

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遺伝子に歴史あり

このページのテーマは、これ!
遺伝子の正体は、本当にDNAなの?
博士、こんにちは。このHPの読者の方から、こんな質問をいただきました。
どんな質問かね?
遺伝子の本体は本当にDNAなんですか?って質問なんですけど...
で、君は何て答えるのかね?
この”遺伝子の部屋”を最初から読み直しなさいって...
強引な答えじゃのぉ。今までの話は、遺伝子の本体がDNAであるということを前提に進められておるのだから、そんな答えではいかん...そこで今日は、遺伝子の本体がDNAであることが明らかになるまでの歴史について紹介しよう。
ハ〜イ!
前に出てきたメンデルが遺伝の法則を発表したのが、1865年のことじゃ。 日本はまだ幕末じゃな。しかし、彼の説は全く受け入れられず、彼の死後忘れ去られてしまった。
かわいそうなメンデルちゃん...
メンデルは、遺伝物質の存在は明らかにしたが、その正体がDNAであることがわかったのは20世紀に入ってからじゃ。
なるほど。で、どんな実験をして、遺伝子の正体がDNAであることを証明したのですか?

まず最初に、1928年に発表されたグリフィス肺炎双球菌を使った実験を紹介しよう。

肺炎双球菌?

そう。 肺炎双球菌をネズミに感染させることによって実験を行ったんじゃよ。 肺炎双球菌には、表面に多糖の殻を持つS型と、多糖の殻を持たないR型がいる。 この多糖の殻に病原性があるから、S型に菌に感染したネズミは死んでしまうが、R型に感染したネズミは死なないんじゃ。 そしてもしS型菌を加熱殺菌すれば、多糖の殻が壊れて病原性はなくなり、感染させてもネズミは死なくなる。

やっぱり加熱調理は大切ですよね。
ところが、R型菌と加熱殺菌したS型菌を混ぜてネズミに注射すると、ネズミは死んでしまったんじゃ。しかも、この死んだネズミからは生きたS型菌が見つかった。なぜだと思うかね?
S型菌がゾンビのように生き返ったんですか?

実は、S型菌の持つ遺伝物質は熱に安定で、加熱殺菌後も遺伝物質として働くことが出来たんじゃ。つまり、このS型菌の遺伝物質がR型菌の中に入り込んで、R型菌に多糖の殻を作らせてS型菌に変えてしまったということなんじゃよ。

なんと!死んだ後に他人に取り憑くなんて、幽霊みたいな奴ですね。この遺伝物質の中に、多糖の殻を作るための暗号がコードされていたというわけですね?

そう。そして1944年にアベリーが、肺炎双球菌のR型をS型に変えた物質の正体がDNAであることを証明したんじゃよ。

素晴らしい!これで、遺伝子の正体がDNAであることを誰も疑わないでしょうね。

そうじゃのぉ。しかし駄目押しで、1952年にハーシーとチェースが行ったもう一つの有名な実験を紹介しておこう。彼らは、T2ファージと呼ばれるウイルスの一種を使って実験したんじゃ。

なんだか宇宙船みたいな、何だかかっこいいウイルスですね。これも死んでから他の生き物に取り憑いたりしたんですか?

そうではない。今度は、生きたままで実験したんじゃ。このT2ファージは、大腸菌に感染して繁殖するウイルスなんじゃ。まず彼らは、当時遺伝物質の候補として挙がっていたDNAとタンパク質を、それぞれ32Pと35Sという放射線で標識したんじゃ。そして、それぞれが標識されたファージを大腸菌に感染させ、繁殖したファージが32Pと35Sのどちらを受け継いだか調べたんじゃよ。

なるほど、賢い方法ですね。で、結果はどうだったんですか?

この結果、35Sでタンパク質を標識したファージを感染させた場合は、35Sの放射線は大腸菌の外に残っていた。ところが、32PでDNAを標識したファージを感染させた場合は、32Pの放射線は大腸菌の中に入ったんじゃ。しかも、繁殖した子孫のファージは、32PでラベルされたDNAを持っていて、35Sでラベルされたタンパク質は持っていなかったんじゃ。

あれれ?タンパク質はどこに行っちゃったんですか?消えちゃったの?と、ということは...

つまり、DNAが遺伝物質として親から子へ受け継がれたというわけじゃよ。分かりやすくすると、下のアニメーションのようになっている。まず、大腸菌の表面に付いたファージウイルスは、遺伝物質であるDNAを大腸菌に注入し、周りのタンパク質の殻は捨ててしまう。そして、ファージDNAは大腸菌の中で複製され、大腸菌の中でDNA上の暗号を元に新しい殻を作るんじゃ。こうしてファージは、どんどん増殖していくんじゃよ。

なるほど。タンパク質は捨てられてしまってたんですね。そしてこれらの発見が、現在の遺伝子科学技術の基礎となったんですね。
その通り。上の肺炎双球菌の例では、R型菌がDNAにより新しいタンパク質を作れるようになってS型菌に変化した。動物や植物でも、新しいDNAを導入することにより新しいタンパク質を作れるようになる。これを応用したのが、遺伝子組換え食品であり、遺伝子治療なんじゃ。 これらについても、詳しいことはいずれお話しよう。
ふむふむ
質問を下さった方にも、このように説明すると分かりやすいじゃろう。
はーい。ちゃんとこのページを読むように言っておきます。
あのねぇ...
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